メニュー

腎硬化症について

高血圧が腎臓を痛める?「腎硬化症」の正しい知識と付き合い方

健康診断などで「少し血圧が高めですね」と指摘されたことはありませんか?高血圧は放置していると、心臓や脳の血管だけでなく、実は「腎臓」にも静かに、しかし確実に大きなダメージを与えます。

今回は、高血圧や加齢と密接に関わっている「腎硬化症(じんこうかしょう)」という病気について、どのような病気なのか、原因や治療法、そして日常生活で気をつけるべきポイントを詳しく解説いたします。

1. 腎硬化症とは? 〜静かに進行する腎臓のSOS〜

腎硬化症とは、一言でいえば「長年の高血圧や動脈硬化によって引き起こされる腎臓の障害」です。

日本では現在、腎臓の働きが著しく低下し、人工透析(機械で血液をきれいにする治療)を必要とする方が年々増えています。日本透析医学会のデータによると、新しく透析を始めることになった患者さんの原因疾患は、2017年までは「1位:糖尿病」「2位:慢性糸球体腎炎」「3位:腎硬化症」という順番で推移していました。

しかし、高齢化を背景に腎硬化症の患者数は年々増加の一途をたどり、2018年にはついに慢性糸球体腎炎を上回り、透析導入原因疾患の第2位となりました。

動脈硬化は、言い換えれば血管の「加齢」です。つまり、腎硬化症が増加している背景には、日本社会の高齢化そのものが深く関わっていると言えます。この病気の恐ろしいところは、体はとても元気で自覚症状がまったくないにもかかわらず、腎臓が徐々に侵されていく点にあります。

「痛くもかゆくもないから」と高血圧を放置してしまうと、気づいたときには腎機能が大きく低下していることがあります。なるべくご自身の腎臓の機能で生涯を健やかに全うできるよう、早めから腎硬化症について知り、対策をしていくことが非常に重要です。

2. 腎硬化症はなぜ起こる? 〜悪循環のメカニズム〜

では、なぜ高血圧が腎臓を悪くするのでしょうか。その原因は、腎臓の精密な構造と血管のダメージにあります。

高血圧の状態が長く続くと、高い圧力に耐えるために血管の壁が分厚く、硬くなっていきます(動脈硬化)。腎臓には老廃物をろ過するための細い血管(細動脈)が無数に張り巡らされていますが、この細動脈で動脈硬化が進むと、血管の通り道が極端に狭くなってしまいます(血管狭小化)。

血管が狭くなると、腎臓の組織に十分な血液が届きません。血液は酸素と栄養を運んでいるため、血液不足に陥った腎臓は慢性的な「低酸素状態(虚血)」となり、徐々に縮んで(萎縮)機能低下を引き起こします。

腎臓には「ネフロン」と呼ばれる、毛細血管の塊(糸球体)と尿の通り道(尿細管)がセットになった「ろ過装置の最小単位」が左右合わせて約200万個あります。腎硬化症が進むと、このネフロンの数が徐々に減少していきます。

すると、体は残された少ないネフロンに無理をさせて、体全体のろ過機能(GFR)をなんとか維持しようとします。残ったネフロンは「もっと血液を送ってくれ!」と高い血流を欲するようになり、その結果、腎臓から血圧をさらに上げるホルモンが分泌されてしまうのです。

「高血圧が腎臓の血管を痛め、痛んだ腎臓がさらに血圧を上げてしまう」という、まさに負の悪循環(スパイラル)が形成されることが、腎硬化症の最大の原因です。

3. 腎硬化症の検査 〜全身のサインを見逃さない〜

腎硬化症を診断し、その進行度を把握するためには、腎臓そのものだけでなく、高血圧が全身に与えている影響を総合的に検査することが大切です。当クリニックでは、主に以下のような検査を行っています。

  • 動脈硬化の検査(眼底検査など)
    腎臓の細い血管を直接見ることは難しいため、体の中で唯一、直接血管を観察できる「目の奥(眼底)」を検査します。眼底の血管(網膜の血管)の動脈硬化の程度は、腎臓の血管の動脈硬化の程度とよく似ているため、非常に重要な指標となります。
  • 心肥大の検査(心エコー・心電図など)
    高血圧が続くと、血液を全身に送り出すポンプである心臓の筋肉が分厚くなる「心肥大」が起こります。心エコーなどで心臓の負担を確認します。
  • 家庭血圧の推移の確認
    診察室での血圧だけでなく、ご自宅でのリラックスした状態での血圧(家庭血圧)の記録が診断の大きな鍵となります。
  • 尿検査・血液検査(特に蛋白尿の確認)
    尿の中にタンパク質が漏れ出ていないか(蛋白尿)、また血液検査で腎臓の働き(クレアチニン値やeGFR)がどれくらい保たれているかを調べます。

4. 腎硬化症の治療法 〜基本は「しっかり血圧を下げること」〜

失われてしまった腎臓の組織(ネフロン)を完全に元の状態に戻すことは、現代の医学でも非常に困難です。そのため、腎硬化症の治療の最大の目標は「これ以上、腎臓を悪くさせないこと」に尽きます。

そのための最も効果的で唯一の治療法が、「降圧(血圧を目標値まで下げること)」です。

お薬(降圧薬)を使った治療では、患者さんの状態に合わせて以下のようなお薬を選択します。

  • カルシウム拮抗薬
    血管を広げて血圧を下げるお薬です。腎臓への血流を保ちながら血圧を下げることができるため、腎硬化症の治療において非常に無難で使いやすい基本のお薬となります。
  • ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
    尿検査で「蛋白尿」が出ている場合には、このお薬が第一選択となります。血圧を下げるだけでなく、腎臓の糸球体にかかる圧力を和らげ、タンパクの漏れを減らして腎臓を保護する強い作用があります。
  • SGLT-2阻害薬
    もともとは糖尿病のお薬として開発されましたが、最近の研究で、糖尿病の有無にかかわらず腎臓を保護し、腎機能の低下を遅らせる有効性がはっきりと示されており、新たな治療の選択肢として注目されています。

5. 腎硬化症の治療で注意すること 〜特に「夏場」は要注意!〜

腎硬化症の治療(特に血圧のお薬を飲まれている方)において、日常生活で最も気をつけていただきたいのが「夏場の過ごし方」です。

腎臓の機能が低下している状態で、夏場に汗をたくさんかいて「脱水」に陥ると、腎臓への血流が極端に減少し、腎機能が急激に悪化してしまう危険性があります。以下のポイントを心がけてください。

  1. 長時間の外出や外作業は控える
    炎天下での長時間の農作業やスポーツ、庭の手入れなどは避けましょう。どうしても必要な場合は、比較的涼しい早朝や夕方以降の時間帯に済ませる工夫が必要です。
  2. 夏場は「少し多めの塩分・水分」を
    普段は高血圧治療のために「減塩」をお願いしていますが、大量に汗をかく夏場の脱水予防においては例外です。熱中症や脱水を防ぐため、こまめな水分補給とともに、適度な塩分補給も意識してください。
  3. 夏場はお薬の減量が必要なことも
    夏は血管が広がり、汗で水分が失われるため、冬場よりも血圧が下がりやすくなります。効きすぎると立ちくらみや腎臓への血流不足を招くため、夏場だけ降圧薬の量を減らす調整が必要になることがよくあります。自己判断でやめず、必ず医師にご相談ください。
  4. 継続的な「家庭血圧のモニタリング」
    季節の変わり目やお薬の調整時期には、ご自宅での毎日の血圧測定が命綱になります。朝起きた時と寝る前の決まった時間に血圧を測り、ノートに記録して受診時にお持ちください。

6. まとめ

腎硬化症は、高血圧や加齢に伴う動脈硬化が原因で、静かに腎臓の機能を奪っていく病気です。透析の原因疾患として急増している現代の国民病とも言える状態ですが、初期には自覚症状がありません。

だからこそ、日頃からの血圧管理と、定期的な健康診断や尿検査が非常に重要になります。特に夏場の脱水には十分注意し、主治医と相談しながら季節に合わせたお薬の調整と生活習慣の改善を続けていきましょう。

「体は元気だから大丈夫」と過信せず、一生涯をあなた自身の元気な腎臓とともに過ごすために、血圧の気がかりがあれば、いつでも当クリニックまでお気軽にご相談ください。一緒に大切な腎臓を守っていきましょう。

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME

AIチャットに質問