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帯状疱疹について

「帯状疱疹」という言葉を聞いたことはありますか? もしかしたら、ご自身やご家族が経験されたことがあるかもしれませんね。帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスが原因で起こる病気です。一度は治ったはずの水ぼうそうのウイルスが、私たちの体の奥にひっそりと潜んでいて、あるきっかけで再び暴れ出すことで発症します。

ここでは、帯状疱疹がなぜ起こるのか、どんな症状が出るのか、どのように診断して治療するのかを、皆さんに分かりやすくお伝えしたいと思います。

1. 帯状疱疹の原因:隠れていたウイルスが目を覚ますとき

帯状疱疹の原因となるのは、「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」というウイルスです。このウイルスは、私たちが子どもの頃にかかる「水ぼうそう(水痘)」を引き起こすウイルスと全く同じものです。

水ぼうそうにかかると、全身に赤い発疹と水ぶくれができ、かゆみを伴います。通常は1週間から10日ほどで治りますが、実はウイルスが完全に体から消え去るわけではありません。水ぼうそうが治った後も、この水痘・帯状疱疹ウイルスは、私たちの体の中にある神経節(神経の根元にある細胞の集まり)という場所に、まるで冬眠するようにじっと潜み続けます。この時点では、特に症状はありません。

そして、何かのきっかけで体の抵抗力(免疫力)が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を開始します。疲労、ストレス、加齢、病気(がんや糖尿病など)、免疫抑制剤の使用などが免疫力低下の主な要因です。ウイルスは神経節から神経を通って皮膚へと移動し、神経に沿って帯状に痛みや発疹を引き起こすのが帯状疱疹なのです。

2. 帯状疱疹の症状:ピリピリとした痛みと帯状の発疹

帯状疱疹の症状は、特徴的な経過をたどることが多いです。

(1) 痛みから始まることが多い

多くの患者さんは、まず体の片側(左右どちらか一方)に、チクチク、ピリピリ、ジンジンといった神経痛のような痛みや、しびれるような違和感を感じます。この痛みは、やがてズキズキとした鋭い痛みに変わることがあります。発疹が出る数日前からこの痛みが現れることが多く、「なんだか体の片側が痛いな…」と感じたら、帯状疱疹のサインかもしれません。

(2) 帯状に現れる発疹と水ぶくれ

痛みが現れてから数日後には、痛みを感じていた部分の皮膚に、虫刺されのような赤い斑点がポツポツと現れ始めます。この赤い斑点は、次第に数が増え、盛り上がってきます。そして、その上に小さな水ぶくれ(水疱)がブツブツと集まってきます。

この水ぶくれが、体の片側に帯状(ベルト状)に広がるのが帯状疱疹の名前の由来です。胸から背中、お腹、顔(特に目の周りやおでこ)、腕、足など、体のどこにでも出ることがありますが、体の中心線を越えて反対側に出ることはほとんどありません。

水ぶくれは、数日経つと黄色っぽい膿を持つようになり(膿疱)、やがてかさぶたになって治っていきます。通常、発疹が出てから完全に治るまでには、2週間から4週間ほどかかります。

(3) その他の症状

発疹や痛みだけでなく、以下のような症状を伴うこともあります。

発熱、頭痛

発疹が出る前や出始めに、風邪のような症状(微熱、倦怠感、頭痛など)を伴うことがあります。

リンパ節の腫れ

発疹が出ている側のリンパ節(首や脇の下、足の付け根など)が腫れて、触ると痛むことがあります。

(4) 注意が必要な特殊な部位の帯状疱疹

顔面(特に目や耳の周り)

目の周りに帯状疱疹ができると、視力低下や失明に至る可能性がある「眼部帯状疱疹」になることがあります。また、耳の周りにできると、顔面神経麻痺や耳鳴り、めまい、難聴などを引き起こす「ラムゼイハント症候群」になることがあります。これらの場合は、早期の治療が非常に重要です。

排泄に関わる神経

お尻や股の周りにできると、尿が出にくくなったり、便秘になったりする排泄障害を引き起こすことがあります。

(5) 帯状疱疹後神経痛(PHN)

帯状疱疹の最もやっかいな合併症が、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」です。これは、帯状疱疹の皮膚症状が治った後も、痛みが3ヶ月以上(または症状が出てから6ヶ月以上)続く状態を指します。ウイルスによって傷つけられた神経が回復せず、痛みの信号を送り続けるために起こります。

痛みは、ピリピリ、ジンジン、焼けるような、電気が走るような、締め付けられるような、など様々で、軽い接触でも激痛を感じることがあります。特に高齢の方や、帯状疱疹の症状が重かった方、治療開始が遅れた方に起こりやすいとされています。PHNは生活の質を著しく低下させるため、帯状疱疹を早期に治療し、PHNへの移行を防ぐことが非常に重要です。

3. 帯状疱疹の検査:症状と経過が最も重要

帯状疱疹の診断は、主に患者さんの症状と、皮膚に現れる特徴的な発疹の見た目で行われます。

(1) 視診(医師の目で見て確認)

経験豊富な医師であれば、患者さんの訴える痛みの場所、そしてそれに続いて現れる片側性で帯状に広がる赤い発疹と水ぶくれの様子を見るだけで、ほとんどの場合、帯状疱疹であると診断できます。患者さんの「水ぼうそうにかかったことがあるか」という問診も重要な情報となります。

(2) 検査(必要に応じて)

通常は特別な検査は不要ですが、診断が難しい場合や、他の病気との区別が必要な場合には、以下のような検査を行うことがあります。

Tzanckテスト(ツァンクテスト)

水ぶくれの一部を採取し、顕微鏡でウイルスの特徴的な細胞(巨細胞など)を確認する検査です。比較的簡便に行えます。

ウイルス分離・PCR法

水ぶくれの内容物から直接ウイルスを培養したり、ウイルスの遺伝子を増幅して検出したりする方法です。より確実にウイルスを特定できますが、結果が出るまでに時間がかかります。

血液検査

ウイルスの抗体(免疫反応によって作られる物質)を調べることもありますが、発症初期には結果が出にくいこともあります。免疫状態を把握するために行うこともあります。

これらの検査はどれも一長一短であり、Tzanckテストは他のウィルス感染と区別がつかないというデメリットがあり、血液検査も検査結果に数日かかるということや、既往感染と区別がつかない(昔かかった感染と区別がつかない)というデメリットがあります。

「デルマクイック®VZV」

水痘・帯状疱疹ウイルスの抗原を検出する迅速検査キットです。

この検査は、イムノクロマトグラフィー法という迅速で簡便な原理を用いており、特別な機器を必要とせず、短時間で判定結果を得られるのが大きな特徴です。

具体的には、皮疹(水疱や膿疱)の内容物、あるいはびらんや潰瘍のぬぐい液を検体として採取し、その中にVZVの抗原が存在するかどうかを調べます。検査時間は5分から10分程度と非常に短い時間で結果がでます。

帯状疱疹は発症後早期に抗ウイルス薬の投与を開始することが重症化を防ぐ上で重要となるため、デルマクイックVZVは早期治療の開始に貢献します。

4. 帯状疱疹の診断:見た目と問診が決め手

前述の通り、帯状疱疹の診断は、患者さんのお話(問診)と、医師が発疹を直接目で見て確認する視診が最も重要です。

問診

いつから、どこが、どのように痛むか。過去に水ぼうそうにかかったことがあるか。最近、疲れが溜まっていないか、ストレスはないか、などをお聞きします。

視診

痛みの部位に、体の片側性に帯状に広がる赤い発疹と水ぶくれが認められれば、帯状疱疹と診断されます。

 

迷わず、内科や皮膚科を受診しましょう。特に顔面や目の周り、耳の周りに症状が出た場合は、すぐに眼科や耳鼻咽喉科も受診する必要があることを伝えてください。

5. 帯状疱疹の治療法:早期発見・早期治療がカギ!

(1) 抗ウイルス薬

最も重要な治療薬です。水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える薬で、飲み薬が一般的です。症状が出始めてからできるだけ早く(発疹が出てから72時間以内が目安)服用を開始することが非常に重要です。早く飲み始めるほど、ウイルスの活動を抑え、症状の悪化を防ぎ、痛みの期間を短くし、帯状疱疹後神経痛への移行リスクを低減することができます。

主な抗ウイルス薬には、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどがあります。
決められた期間(通常1週間程度)しっかりと服用することが大切です。

(2) 痛み止め(鎮痛薬)

痛みを和らげるために、内服薬や外用薬が処方されます。

内服薬

非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs、ロキソニンなど)、アセトアミノフェンなどが用いられます。痛みが強い場合には、神経の痛みに効果のあるプレガバリンやガバペンチンといった薬が処方されることもあります。

外用薬

カプサイシン軟膏やリドカインテープなどが使われることもあります。
痛みを我慢すると、それがストレスとなってさらに免疫力を低下させてしまうこともあります。痛い時は我慢せずに医師に伝え、適切な痛み止めを処方してもらいましょう。

(3) その他の治療

外用薬(塗り薬)

水ぶくれが破れてジュクジュクしている場合には、細菌感染を防ぐための抗生物質入りの軟膏や、炎症を抑えるステロイド軟膏などが処方されることがあります。

点滴治療

免疫力が著しく低下している方や、重症の帯状疱疹の場合、入院して抗ウイルス薬の点滴治療を行うことがあります。

神経ブロック

痛みが非常に強い場合や、帯状疱疹後神経痛の痛みが続く場合には、専門の麻酔科医やペインクリニックで、神経ブロック注射を行うことがあります。これは、痛みを感じる神経の近くに局所麻酔薬などを注射し、痛みの信号をブロックする治療法です。

(4) 日常生活での注意点

安静にする

免疫力が低下している証拠なので、無理をせず、十分に休息をとりましょう。体を温めて、リラックスすることも大切です。

栄養バランスの取れた食事

免疫力を高めるために、バランスの取れた食事を心がけましょう。

患部を清潔に保つ

水ぶくれが破れても、触りすぎたり掻きむしったりしないように注意し、清潔に保ちましょう。お風呂に入っても大丈夫ですが、患部をこすらないように優しく洗いましょう。

感染対策

水ぶくれの中にはウイルスがいます。水ぼうそうにかかったことがない人や、免疫力が低い乳幼児、妊婦さんなどにはうつる可能性がありますので、水ぶくれが治るまでは、直接触れないように注意し、タオルなどを共有しないようにしましょう。特に、水ぼうそうにかかったことがない小さなお子さんとの接触は避けるようにしてください。

(5) 予防について

近年では、帯状疱疹を予防するためのワクチン接種が推奨されています。特に50歳以上の方や、免疫力が低下しやすい持病をお持ちの方には、医師に相談してワクチン接種を検討することをおすすめします。ワクチンには不活化ワクチンと生ワクチンの2種類があり、効果や対象年齢、費用などが異なりますので、医療機関でよく説明を聞いてください。

比較表
項目 乾燥弱毒生水痘ワクチン(水痘ワクチン) 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス)
種類 生ワクチン 不活化ワクチン
接種回数 1回

2回(2ヶ月間隔で接種、遅くとも6ヶ月後までに2回目接種)

対象年齢 50歳以上 50歳以上
予防効果 約50~60%(帯状疱疹の発症予防) 90%以上(帯状疱疹の発症予防)
約50~70%(帯状疱疹後神経痛の予防) 85%以上(帯状疱疹後神経痛の予防)
持続期間 約5年 10年以上
主な副反応 接種部位の腫れ、痛み、赤み。ごく稀に水ぼうそうに似た発疹。 接種部位の腫れ、痛み、赤み。全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、発熱など。
費用 比較的安価(自治体によって助成あり) 比較的高価(自治体によって助成あり)
接種できない人

免疫機能が低下している人、妊婦、ステロイド治療中の人など。

生ワクチンが接種できない人でも接種可能。重い急性疾患にかかっている人など。
特徴 水ぼうそうのワクチンとしても使用される。 免疫力が低下している人にも接種可能。
補足事項
  • 生ワクチン:病原性を弱めたウイルスそのものを使用するため、免疫力が低下している方や妊婦さんなどは接種できません。
  • 不活化ワクチン:ウイルスの病原性をなくした成分を使用するため、免疫力が低下している方でも接種できる場合があります。
  • 費用助成:帯状疱疹ワクチンは、自治体によって費用助成を行っている場合があります。お住まいの自治体の情報を確認することをおすすめします。
  • どちらのワクチンを選ぶか:ワクチンの種類によって、効果の持続期間や副反応、費用が異なります。ご自身の健康状態やライフスタイル、費用などを考慮し、医師とよく相談して選択することが重要です。

まとめ

帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルスが原因で起こる、誰にでも起こりうる病気です。初期のピリピリとした痛みから始まり、帯状の発疹と水ぶくれが特徴です。

最も大切なのは、「早期発見・早期治療」です。もし、体の片側にチクチク、ピリピリとした痛みを感じ、その後に赤い発疹が出てきたら、「もしかして帯状疱疹かな?」と疑って、できるだけ早く医療機関を受診してください。早期に抗ウイルス薬を服用することで、症状の悪化を防ぎ、つらい痛みが長引く帯状疱疹後神経痛への移行リスクを大きく減らすことができます。

ご自身の体からのサインを見逃さず、適切に対処することで、帯状疱疹による苦痛を最小限に抑え、健やかな日々を取り戻しましょう。

この記事の執筆者

三鷹あまの内科・腎クリニック
院長 天野博明

経歴

  • 2011年3月 埼玉医科大学医学部医学科卒業
  • 2011年4月 埼玉医科大学国際医療センター 初期臨床研修
  • 2013年4月 埼玉医科大学病院腎臓内科 助教
  • 2024年8月 埼玉医科大学病院腎臓内科 講師 
  • 2026年4月 三鷹あまの内科・腎クリニック開業

資格

  • 医学博士
  • 日本内科学会総合内科専門医・指導医
  • 日本腎臓学会専門医・指導医
  • 日本透析医学会専門医・指導医
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