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骨粗鬆症と腎臓の深い関係 〜骨を守り、腎臓も守る〜

[2026.06.28]

こんにちは。三鷹あまの内科・腎クリニックです。

皆さんは「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」という言葉を聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。「背中が曲がってくる病気」「お年寄りが転んで骨折しやすくなる病気」といった、整形外科的なイメージを持たれる方が多いかもしれません。

しかし実は、私たちの「骨」と「腎臓」には、切っても切れない非常に深い関係があります。腎臓の働きが低下すると、骨がスカスカになりやすくなり、逆に骨の治療を一歩間違えると、腎臓の働きをさらに悪化させてしまう危険性も潜んでいるのです。

本日のブログでは、一見関係なさそうに見える「骨粗鬆症と腎臓のつながり」や、当院のような腎臓内科がなぜ骨の健康にこだわるのか、その理由について詳しく、そしてできるだけわかりやすく解説していきます。

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは?

骨粗鬆症とは、骨の強度が低下し、ちょっとした転倒や衝撃で骨折しやすくなってしまう病気です。日本では推定1,000万人以上の患者さんがいると言われており、特に閉経後の女性やご高齢の方に多く見られます。骨折がきっかけで寝たきりになってしまうケースも少なくないため、健康寿命を延ばすために非常に重要なテーマです。

ここで知っておいていただきたい大切なポイントがあります。骨の強さを決めるのは、「骨量(骨密度)」と「骨質(こつしつ)」の2つであるということです。

家づくりに例えてみましょう。

  • 骨量(骨密度): 家を支える「柱の太さ」や「コンクリートの量」

  • 骨質: 柱に使われている「木材のしなやかさ」や「鉄筋の材質の良さ」

病院で行う一般的な骨密度検査(DEXA法など)で測ることができるのは、主に「骨量」の方です。しかし、いくら柱が太くても(=骨密度が正常でも)、材質がシロアリに食われてボロボロ(=骨質が悪い)であれば、家は簡単に倒壊してしまいますよね。

実は現在の医療でも、この「骨質」を外来の検査で正確に評価することは非常に難しいとされています。そのため、「骨密度検査では正常と言われたのに骨折してしまった」ということが起こり得るのです。私たちは、見えにくい「骨質」の低下も念頭に置きながら、総合的に骨の健康を守っていく必要があります。

多様化する骨粗鬆症の治療薬

かつて、骨粗鬆症の治療薬といえば「ビタミンD製剤」くらいしか選択肢がない時代がありました。しかし医療の進歩は目覚ましく、現在では患者さんの状態に合わせて選べるほど、多数の優れたお薬が登場しています。

現在の主な骨粗鬆症治療薬を、わかりやすく表にまとめてみました。

薬の種類(働き) 特徴 代表的なお薬の例

骨吸収抑制薬


(骨が溶けるのを防ぐ)

古くなった骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを抑え、骨の減少を食い止めます。現在最もよく使われるタイプです。 ビスホスホネート製剤、デノスマブ、SERM(サーム)など

骨形成促進薬


(新しい骨を作る)

新しい骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを強力に刺激し、骨を新しく増やすお薬です。重症の方によく使われます。 テリパラチド、ロモソズマブなど

骨代謝調節薬


(バランスを整える)

腸からのカルシウム吸収を助けたり、骨の栄養を補給したりして、骨の土台作りをサポートします。 活性型ビタミンD3製剤、カルシウム製剤など

このように選択肢が増えたことで、より効果的な治療が可能になりました。しかし、お薬が増えたからこそ、「どの薬を、どれくらいの量使うか」という医師のさじ加減がこれまで以上に重要になっています。

腎機能悪化に伴う「CKD-MBD」とは?

さて、ここからが腎臓内科としての本題です。腎臓の働きが低下する「慢性腎臓病(CKD)」の患者さんには、一般的な骨粗鬆症と非常によく似た、しかし少しメカニズムの違う骨の異常が起こります。これを専門用語でCKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)と呼びます。

なぜ腎臓が悪くなると、骨が弱くなるのでしょうか?

その最大の鍵を握っているのが「ビタミンD」です。

私たちが食事から摂ったり、日光を浴びて作られたりしたビタミンDは、そのままでは働くことができません。腎臓で「活性型」というスイッチを入れられて(水酸化されて)初めて、本来の力を発揮します。活性型ビタミンDは、腸からカルシウムを吸収して血液中に取り込むという非常に重要な役割を担っています。

ところが、腎機能が悪化すると、このビタミンDのスイッチを入れる作業ができなくなります。すると、どんなことが起こるでしょうか。

  1. 腸からカルシウムが吸収できなくなり、血液中のカルシウム濃度が下がります。

  2. 体は「血液中のカルシウムが足りない!危険だ!」とパニックを起こします。

  3. 血液中のカルシウム濃度を維持するために、自分の骨を溶かしてカルシウムを血液中に補充し始めます。

これが毎日繰り返されることで、骨はどんどんスカスカになってしまいます。さらに腎機能低下が進行し、体の代償機能(カバーする力)が限界を迎えると、血液検査のデータは「高リン・低カルシウム」という異常値を示すようになります。

これを防ぎ、バランスを調整するために、私たち腎臓内科医は外部から「すでにスイッチが入った状態のビタミンD(活性型ビタミンD製剤)」をお薬として投与するのです。

ビタミンDだけでPTH(副甲状腺ホルモン)を管理する限界

体が「骨を溶かしてカルシウムを出せ!」と命令を出すとき、その指令塔の役割を果たしているのが、首のあたりにある副甲状腺という臓器から出る「PTH(副甲状腺ホルモン)」です。

CKD-MBDの患者さんでは、このPTHが過剰に分泌され続けてしまうため、治療によってPTHの値を適切な範囲に抑え込む必要があります。ガイドラインでは、透析期などの腎機能低下時において、インタクトPTH(I-PTH)という数値を60〜240 pg/mLという、健康な方より「やや高めの基準」を目標に管理することが推奨されています。

先ほどお話しした通り、この暴走を抑えるためには「ビタミンD」を投与するのが基本です。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

「高くなったPTHを下げるために、ビタミンDだけを使って無理やり管理しようとすると、限界が来る」のです。なぜなら、ビタミンDをたくさん投与すればするほど、腸からのカルシウム吸収が強くなりすぎ、今度は血液中のカルシウムが上がりすぎてしまうからです。

忍び寄る「ビタミンDによる高カルシウム血症」の恐怖

実は、医療現場においてビタミンDの効きすぎによる「高カルシウム血症」は、かなり厄介な問題です。

骨粗鬆症の治療や、CKD-MBDの管理のためにビタミンD製剤を過剰に投与してしまうと、血液中のカルシウム濃度が急上昇します。高カルシウム血症になると、喉の渇き、疲労感、吐き気などの症状が出ることがありますが、最も恐ろしいのは「腎機能障害を誘発・悪化させてしまうこと」です。

血液中のカルシウムが高すぎると、腎臓に対して次のような深刻なダメージを与えます。

  1. 腎臓への血流低下(慢性的な虚血): 腎臓の血管をギュッと収縮させてしまい、腎臓が常に酸欠状態(虚血)になってしまいます。

  2. 尿路結石の形成: 血液中で余ったカルシウムは尿の中に大量に排泄されます。これが結晶化すると「結石」となり、尿の通り道を塞いで腎臓に大きなダメージを与えます。

「骨を良くしよう」「PTHを下げよう」と良かれと思って使ったビタミンDが、結果的に患者さんの大切な腎臓の寿命を縮めてしまう。このような悪循環は、絶対に避けなければなりません。

血清カルシウムは「高すぎず、低すぎず」を目指す

では、どうすれば良いのでしょうか。私たちが最も神経を使うのが、血液検査におけるカルシウム(血清Ca)値の繊細なコントロールです。

多くの病院では、カルシウム値の目標を「8.5〜10.0 mg/dl」という狭い範囲に設定し、慎重にモニタリングしています。

ここで、血液検査の数値を読み解く上で非常に重要な「補正カルシウム(補正Ca)」について少し解説させてください。

血液中のカルシウムの多くは「アルブミン」というタンパク質とくっついて存在しています。そのため、栄養状態が悪くアルブミンが低い方は、見かけ上のカルシウム値も低く出てしまいます。これを真の実力値に計算し直すのが以下の「補正Caの式(Payneの式)」です。

【補正Ca = 実測カルシウム値 +(4.0 - 血清アルブミン値)】

※アルブミン値が4.0未満の場合に使用します。

日常の診療では、この「補正Ca」を計算して患者さんの状態を評価します。しかし、話はそう単純ではありません。

実は、私たちの体の中で実際に細胞に働きかけ、生理的な活性を持っている「真のカルシウム」は、タンパク質とくっついていない「遊離カルシウム(イオン化カルシウム)」と呼ばれるものです。しかし、この遊離カルシウムを一般的な外来の血液検査で正確に測ることは、技術的に非常に困難です。

これが何を意味するかというと、「計算上の補正Caが基準範囲内(正常)におさまっていても、体の中で実際に働いている遊離カルシウムは高すぎる『隠れ高カルシウム』や、低すぎる『隠れ低カルシウム』が存在する」ということです。

つまり、計算で出した補正Caの値だけで全てをモニタリングしきれるわけではないのです。「基準値に入っているから大丈夫!」と油断して同じ薬を出し続けるのではなく、他の採血データや患者さんの体調、腎機能の推移を総合的に見ながら、「高すぎず、低すぎずの絶妙なライン」を常に目指し続けることが、妥当かつ安全な医療と言えます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。「骨粗鬆症」という身近な病気と、体を裏方で支える「腎臓」が、カルシウムやビタミンDという物質を通じていかに密接に関わり合っているか、少しでもお伝えできていれば嬉しく思います。

骨を守ることは、寝たきりを防ぎ、元気に歩き続けるために不可欠です。しかし、その治療が腎臓の負担になってしまっては本末転倒です。

三鷹あまの内科・腎クリニックでは、最新のガイドラインに基づきながらも、決して数値だけを見るのではなく、患者さんお一人おひとりの「骨の健康」と「腎臓の健康」の両方を守るベストなバランスを探求しています。

治療の選択肢が多様化している今だからこそ、患者さんの状態を丁寧に見極めながら、適宜、最適な治療方針をご提案して参ります。

骨粗鬆症の薬を内服している方などで、現在のお薬に不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

参考文献)

慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(2025 年改訂版) 一般社団法人 日本透析医学会

Scientific Reports. 2020; 10:  4418.

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