健康診断で「尿検査の異常」を指摘されたら?尿定性検査の正しい見方
健康診断や人間ドックの結果が手元に届き、「尿検査で引っかかってしまった…」と不安な気持ちでこのブログを読んでいる方もいらっしゃるかもしれません。尿検査は、痛みもなく簡単に体の状態を知ることができる非常に優秀な検査です。
今回は、腎臓内科の日常診療でも最も基本となる「尿定性検査(にょうていせいけんさ)」について、患者さんにわかりやすく解説します。
1 検尿異常ってなに
「尿定性検査」とは、採尿していただいた尿に専用の試験紙を浸し、その色の変化を見て体の状態を調べる検査のことです。結果は「-(マイナス/陰性)」「±(プラスマイナス/疑陽性)」「+(プラス/陽性)」といった記号で表されます。
ここで言う「検尿異常」とは、本来は尿に含まれないはずの成分が検出されたり、基準となる状態から数値が外れたりしていることを指します。ただし、異常が出たからといってすぐに「重い病気だ!」と慌てる必要はありません。尿は体調や食事、運動、ストレスなどの影響を非常に受けやすいため、まずは「体からの小さなサイン」として受け止め、正しく原因を探ることが大切です。
【注意ポイント:健診の検査項目について】
一般的な会社の健康診断や市区町村の住民健診では、時間の都合や費用の問題から「尿蛋白」「尿糖」「尿潜血」の3項目しか調べないケースも多くあります。つまり、健診で「異常なし」であっても、すべての項目を細かくチェックしたわけではない場合があることには留意しておきましょう。
2 考えられる検尿異常(正常値と異常値の目安)

試験紙では、主に以下の10項目をチェックしています。それぞれの項目が何を意味しているのか、そして「正常な状態」と「異常を疑う状態」の目安をまとめました。
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比重(ひじゅう)
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意味: 尿の濃さ(水分量)の指標です。
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正常値: 1.006~1.022
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異常値: 1.025以上(高比重)、1.005以下(低比重)
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pH(ペーハー)
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意味: 尿が酸性か
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アルカリ性かの度合いを示します。
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正常値: 4.6~8.0(通常は弱酸性の6.0前後)
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異常値: 常に強酸性(5.0未満)または強アルカリ性(8.0超)
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蛋白(たんぱく)
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意味: 腎臓の機能低下や、尿路系の異常がないかを見ます。
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正常値: -(陰性)
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異常値: +(陽性)以上
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糖(とう)
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意味: 糖尿病や腎性糖尿の有無を調べます。
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正常値: -(陰性)
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異常値: +(陽性)以上
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潜血(せんけつ)
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意味: 腎臓や膀胱、尿管などからの出血がないかを確認します。
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正常値: -(陰性)
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異常値: +(陽性)以上
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ケトン体
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意味: 体内の糖代謝や脂質代謝の異常(エネルギー不足など)を示します。
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正常値: -(陰性)
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異常値: +(陽性)以上
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ビリルビン
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意味: 肝臓や胆道の異常を反映します。
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正常値: -(陰性)
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異常値: +(陽性)以上
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ウロビリノーゲン
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意味: 肝機能の低下や、赤血球が壊れる病気(溶血)の指標です。
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正常値: 正常(±)
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異常値: +(陽性)
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以上、または完全に陰性(-)の場合も異常を疑います
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亜硝酸塩(あしょうさんえん)
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意味: 尿路感染症(細菌の有無)を調べます。
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正常値: -(陰性)
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異常値: +(陽性)
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白血球(はっけっきゅう)
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意味: 尿路系や腎臓に炎症・感染症が起きていないかを見ます。
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正常値: -(陰性)
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異常値: +(陽性)以上
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3 それぞれの検尿異常のときはなにを考えるか
実際に「+(陽性)」などの異常が出た場合、医師はどのような病気や状態を疑うのでしょうか。
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比重の異常
水分不足(脱水症状)のときは高く(濃く)なり、水分を摂りすぎた時や、腎臓が尿を濃縮する機能が落ちている時(慢性腎臓病の進行など)は低く(薄く)なります。
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pHの異常
肉食中心だと酸性に、野菜中心だとアルカリ性に傾きます。極端な酸性・アルカリ性が続くと、尿路結石ができやすくなったり、尿路感染症が隠れていたりするサインになります。
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蛋白尿(※小児の検査時は要注意)
慢性腎臓病(CKD)や腎炎など、腎臓のフィルター機能が壊れている可能性を疑います。足のむくみやだるさを伴うこともあります。激しい運動後や発熱時にも一時的に出ることがあります。
【小児・思春期によくある起立性蛋白尿】
小児や思春期の方で蛋白尿が陽性になった場合、「起立性蛋白尿」の可能性があります。これは、日中立って活動している時にだけ尿にタンパクが下りてしまう体質的なもので、病気ではありません。この鑑別のためには、起きてすぐの「早朝尿(一番尿)」を検査することが非常に重要になります。
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尿糖
血液中の糖分が高すぎる「糖尿病」を真っ先に疑います。喉の渇き、頻尿、体重減少などの症状がないか確認します。血糖値は正常でも尿にだけ糖が漏れる「腎性糖尿(体質的なもの)」のケースもあります。
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尿潜血
尿の通り道に、結石(尿管結石など)、炎症(膀胱炎)、あるいはポリープや腫瘍(がん)が隠れていないかを探ります。背中や腰の激しい痛みがある場合は結石を疑います。女性の場合は、生理の血液が混じってしまうこともよくあります。
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ケトン体
極端な糖質制限ダイエットや悪阻(つわり)、長時間の絶食状態で出やすくなります。重症の糖尿病でインスリンが極端に不足している危険な状態でも陽性になります。
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ビリルビン・ウロビリノーゲン
体がだるい、白目が黄色い(黄疸)などの症状があり、肝炎や肝硬変、胆石など肝臓・胆のう系のトラブルを疑います。
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亜硝酸塩・白血球
膀胱炎や腎盂腎炎などの「尿路感染症」を強く疑います。排尿時のチクチクとした痛み、頻尿、残尿感、腰の痛みや発熱などの自覚症状を伴うことが多いです。
4 正しい「早朝尿」の採り方と注意点
小児の起立性蛋白尿の確認だけでなく、大人の健診の再検査などでも「早朝尿」を持参するよう指示されることがあります。より正確な検査結果を得るために、ご自宅で採尿する際は以下のポイントに気をつけましょう。
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起床後すぐの尿を採る
朝起きて、一番最初にトイレに行った時の尿を採取してください。睡眠中は体が横になっているため、活動による影響を排除できます。また、夜間に尿が濃縮されているため、微量な異常も発見しやすくなります。
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「中間尿」を採る(これが一番重要です!)
出始めの尿は、尿道口付近の細菌やおりものなどの汚れが混ざりやすいため、検査容器には入れません。
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① 最初の尿は少しだけ便器に捨てる(出始めの尿)
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② 途中の尿を検査容器に採る(中間尿)
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③ 残りの尿は便器に出し切る
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なるべく早く提出する
尿は時間が経つと、空気中の細菌が繁殖したり成分が変化したりして正しい結果が出なくなります。採尿後はなるべく数時間以内にクリニックへお持ちください。
5 偽陰性と偽陽性について
尿定性検査はあくまで簡易的な検査であるため、食事や薬、尿の濃さなどによって結果がブレることがあります。
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偽陽性: 本当は病気ではないのに、検査結果が「異常あり(+)」となってしまうこと。
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偽陰性: 本当は病気が隠れているのに、検査結果が「異常なし(-)」となってしまうこと。
| 検査項目 | 偽陽性(本当は正常なのに+になる原因) | 偽陰性(本当は異常なのに-になる原因) |
| 蛋白 | 尿が極端に濃い、アルカリ性が強い、生理の血液 | 尿が極端に薄い、特殊なタンパク質の存在 |
| 糖 | 採尿コップに漂白剤などの酸化剤が残っていた | ビタミンCの大量摂取 |
| 潜血 | 激しい運動後の筋肉成分、生理の血液 | ビタミンCの大量摂取、尿が極端に濃い |
| 白血球 | 膣分泌物(おりもの)の混入 | 尿に糖やタンパクが多い、特定の抗生物質の使用 |
| 亜硝酸塩 | 採尿してから長時間放置した(細菌の繁殖) | 頻尿で膀胱に尿が留まる時間が短い、野菜不足 |
【注意ポイント:ビタミンCの罠】
特に気をつけたいのがビタミンCです。サプリメントやビタミンC入り飲料、風邪薬などをたくさん飲んだ後に尿検査をすると、本当は血や糖が混じっていても、ビタミンCの還元作用によって「異常なし」と判定されてしまう(偽陰性)ことがあります。健診前日や当日は、ビタミンCの過剰摂取は控えましょう。
6 わからないときは定量検査を行う
試験紙による「定性検査」は、あくまで「ある・なし(または大まかな量)」をざっくりと判定するスクリーニング検査です。これだけで「あなたは〇〇という病気です」と確定診断を下すことはできません。
そのため、定性検査で異常が見つかった場合や、結果がはっきりしない場合には、クリニックでさらに詳しい「尿定量検査」や「尿沈渣(にょうちんさ)」を行います。
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尿定量検査: 尿の中に含まれるタンパク質や糖などの「正確な量(数値)」を機械でしっかり測定し、重症度を評価します。
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尿沈渣: 尿を遠心分離機にかけ、沈殿した成分を顕微鏡で直接観察します。赤血球の形が変形していないか、白血球や細菌の数はどれくらいか、がん細胞がないかなどを直接目で見て確認できるため、非常に有力な情報が得られます。
これらに血液検査や、超音波(エコー)検査を組み合わせて、最終的な診断へとつなげていきます。
7 さいごに
健康診断の尿検査で「異常あり」の判定が出ると不安になりますよね。しかし、これまで解説してきた通り、一時的な疲れや食事の影響、起立性蛋白尿、あるいは偽陽性であるケースも少なくありません。
一番危険なのは、「たぶん疲れのせいだろう」と自己判断で放置してしまうことです。腎臓の病気は、かなり進行するまで自覚症状が出ないという怖い特徴を持っています。
三鷹あまの内科・腎臓内科クリニックでは、専門医の視点から患者さんの不安に寄り添い、本当に詳しい検査や治療が必要な状態かどうかしっかりと見極めます。専門的な内容もできる限りわかりやすく、丁寧にご説明いたします。「こんなことで受診してもいいのかな?」と迷わず、ぜひお気軽にご相談ください。あなたの腎臓と全身の健康を守るサポートをさせていただきます。
