蛋白尿
蛋白尿の正常値
蛋白尿は1日にどのくらの蛋白尿が尿から排泄されたかどうかを計測します。もっとも正確な方法は1日の尿を貯めてその量と濃度から測定する蓄尿という方法です。ですが、これは外来で行うには時間もかかるため、入院でしかできない検査です。ですが、もっとも正確な検査となります。次に一般的に外来で用いられている方法が随時尿を用いた測定方法です。実は人間は尿中にクレアチニンを1日に1g排泄しているということに基づいて算出されるグラムクレアチニン法という方法を用いています。これは、尿の濃度さえわかればいいので、外来で用いられる簡易的な蛋白尿算出方法です。畜尿が何g/日と記載するのに対して、グラムクレアチニン法は何g/g・Crと記載します。
実は正常な方でも蛋白尿は排泄されており、生理的な尿蛋白というのがあります。いわゆる正常値ですが、だいたい100-150 mg/日となります。この範囲を超えてくると、尿蛋白が陽性ですねとお話させていただきます。あと、さらに細かい概念として微量アルブミン尿という蛋白尿があります。人の血液の中に流れる蛋白質はいろいろな種類があります。メジャーなものでアルブミン、グロブリンなどがありますがグロブリンはさらにαやβ、γなどにわかれます。とくに生体にとってアルブミンは物質の運搬や浸透圧の維持にかかわっているのですが、このアルブミン蛋白がどのくらい尿に排泄されているかをみることで、早期腎障害の程度を検出することができます。特に糖尿病の患者さんではこの微量アルブミン尿がでている時期にしっかり治療をしておかないと、大量蛋白尿が出るようになってからでは治療の効果が低くなってしまいます。微量アルブミン尿も正常値があり30mg/日以下とされています。蛋白尿と異なり、微量アルブミン尿は毎回計測できるわけではなく、保険診療で3か月に1回と決められています。
慢性腎臓病の重症度とリスク
これらの背景をもとに、エビデンス基づく慢性腎臓病のガイドラインでは蛋白尿を3つのカテゴリーに分けて重症度リスクを示しています。A1は150mg/日以下、A2は150-500/日、A3が500mg/日以上としています。
蛋白尿がでたときに考えられる疾患
微量の蛋白尿
特に上述するような微量の蛋白尿、いわゆる微量アルブミン尿が出現した際は糖尿病などの疾患を疑います。また、腎臓の血液をろ過する糸球体というところに高い圧がかかるような疾患、腎硬化症などでも出現することがあります。
1g/日以下の蛋白尿
このなかでも500 mg/日以下の場合は軽度の蛋白尿とされます。この場合は慢性腎臓病のなかでもIgA腎症や初期の糖尿病関連腎臓病、血管炎や尿路感染・尿路結石などさまざまな要因が考えられます。そのほか、尿細管間質性腎炎といって薬剤アレルギーや薬物中毒によって起こされる腎炎によっておこる蛋白尿も軽度蛋白尿を呈することがあります。
1g/日以上の蛋白尿
多量の蛋白尿とされます。IgA腎症や進行した糖尿病関連腎臓病などでよく見られます。そのほか、3.5 g/日以上となるとネフローゼ症候群といって血中の蛋白濃度が低下するほどまで尿から蛋白の排泄が更新する状態になると、浮腫(むくみ)も伴うようになります。ネフローゼ症候群をきたす疾患としては糖尿病や全身性エリテマトーデス、アミロイドーシスなどの全身の疾患によって引き起こされるものから、微小変化型ネフローゼ、巣状糸球体硬化症、膜性腎症などのような腎臓に限局した障害で引き起こされる(実際には自己抗体などが関与しているのですが)ものがあります。
蛋白尿の治療目標
じつは蛋白尿がどの程度で続けているかで腎機能の予後を示した文献がありますが、1g/日以上継続的に出ている方は1g/日以下の方と比較して、腎機能予後が大きく異なるとされています。腎臓内科としては蛋白尿を1g/日以下に減らすことを第一目標として診療にあたります。そして、さらに目指せるのであれば500mg/日以下になるように管理します。ここまで目指せれば、治療している方としていない方で腎機能予後に大きく差がでてくるでしょう。
蛋白尿治療の実際
蛋白尿をきたす疾患により異なりますが、免疫抑制療法と支持療法という2つの治療方法に分けられます。
ほんどの腎疾患は免疫異常により引き起こされます。自己の免疫が腎臓の組織を異物とみなし、抗体産生や免疫細胞の異常な活性化により腎臓の組織を破壊していきます。特に血液から尿をつくるフィルターである糸球体は非常に精密な組織です。こちらが少しでも壊されると容易に蛋白尿や血尿が出るようになります。免疫抑制療法の主軸はステロイド、特にプレドニゾロンを中心とした治療になります。副作用も多いですが、根本治療になるため腎生検などで診断がついた方には積極的に勧めています。ただ、クリニックでは有事の対応ができないため、安定するまでは総合病院での対応になります。
もう一つの治療が支持療法です。支持療法にはいくつかの薬があります。
ARB(アンギオテンシンⅡ受容体阻害薬)、ACE-i(アンギオテンシン変換酵素阻害薬)
最も有名な支持療法の薬になります。これは血圧を下げる薬であると同時に腎臓の蛋白尿を低下させる効果があり、たくさんの種類があります。血圧を上昇させるアンギオテンシンⅡは糸球体のろ過圧を調整しており、こちらを抑制するため蛋白尿が低下します。しかし、副作用としてろ過する尿量が減少してしまうため、腎機能が低下してしまいます。そのため、腎機能の低下が許容範囲か血液検査で確認しながら慎重に増量していきます。そのほか、高カリウム血症などが有名な副作用です。また、ACE-iは咳が特徴的な副作用になります。
SGLT-2阻害薬
これは糸球体を通過した尿が精製される尿細管という組織にあるSGLT2というトランスポーターを阻害する薬です。トランスポーターとはいわゆる関所のようなもので、SGLT2は糖(グルコース)とナトリウムを主に管理しています。SGLT2が働いて体内に糖とナトリウムが吸収されますが、阻害されれば尿中に糖とナトリウムが排泄されます。特にナトリウムが排泄されることで、いわゆる減塩効果を生じさせ、糸球体のろ過圧が低下し、蛋白尿が減るとされています。
MRA阻害薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
アルドステロンというホルモンの働きを阻害する薬で、主に高血圧や慢性心不全の治療に使用されます。アルドステロンは体内の水分や塩分のバランスを調整するホルモンで、こちらも尿細管の細胞に作用することで、ナトリウムの排泄に関与します。アルドステロンが作用すればナトリウムが体に吸収され、アルドステロンが阻害されればナトリウムが尿へ排泄されます。腎臓以外の臓器の代謝にもかかわるアルドステロンですが、簡単に説明するとナトリウムを排泄することで血圧を下げ、糸球体ろ過圧を低下させることで蛋白尿を低下させます。
もちろん薬物療法が大事なのですが、薬物療法の効果を最大限に引き出すには前提として食事療法がきちんとなされていることが重要になります。特に減塩、蛋白制限、肥満の方は減量などが重要になってきます。栄養指導などを行いながら、患者さんと二人三脚で治療していきます。
蛋白尿がでたらどうする?
腎機能障害は知らないうちに進行していることが多い疾患です。蛋白尿は腎機能障害を検知する数少ないサインの一つです。症状がないしほっとけばいいやという感覚でいると、知らないうちに病気が進行していることがあります。尿だけで早期発見できるのであれば、こんなにも低侵襲なものはありません。わからないことがあれば、医療機関にすぐ相談してみましょう。
