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乏尿(尿が少ない)について

乏尿(尿が少ない)について:放置できない腎臓のサイン

「今日はトイレの回数が極端に少ない」「尿の量がペットボトル1本分もない気がする」……そんな異変を感じたことはありませんか?

尿が少ない状態(乏尿)は、単なる脱水だけでなく、腎臓が悲鳴を上げている重大なサインである可能性があります。本ページでは、乏尿の基準から原因、検査、治療までを分かりやすく解説します。

1. 「尿が少ない」の基準とは?—乏尿・無尿の定義

「尿が少ない」と感じても、それが一時的なものか、医学的に注意が必要な状態なのか判断に迷うこともあるでしょう。医学的には以下の数値が目安となります。

状態 1日の尿量の目安 患者さんの感覚的な目安
正常 1,000ml 〜 2,000ml

500mlペットボトル 2本〜4本分程度

乏尿
(ぼうにょう)
400ml 以下

500mlペットボトル 1本分に満たない

無尿
(むにょう)
100ml 以下

ほとんど出ない、または一滴も出ない

「回数」と「量」の違いに注意

「何度もトイレに行くが、一回に出る量がごくわずか」という場合は「頻尿(ひんにょう)」であり、1日のトータル量が変わらなければ乏尿とは呼びません。乏尿はあくまで「1日に作られる尿の総量」が減っている状態を指します。

2. なぜ尿が出なくなるのか?「3つの原因」を解説

尿が作られ、排出されるまでには「血液が腎臓に届く」「腎臓で尿を作る」「尿管を通って排出する」という3つのステップがあります。乏尿の原因も、このステップのどこに障害があるかで3つに分類されます。

① 腎前性(じんぜんせい):腎臓へ届く血液が足りない

腎臓そのものは元気ですが、腎臓に流れ込む血液が不足して尿が作れない状態です。

原因

激しい脱水、大量の発汗、出血、重度の下痢、心不全(ポンプ機能低下)など。

② 腎性(じんせい):腎臓自体が故障している

尿を作る工場である腎臓そのものがダメージを受けている状態です。

原因

急性腎小体腎炎、薬剤の副作用、重症感染症(敗血症)など。

③ 腎後性(じんごせい):出口が塞がっている

腎臓で尿は作られているのに、通り道が詰まって外に出られない状態です。

原因

尿路結石、前立腺肥大症、膀胱がんや子宮がんによる圧迫。

3. 放置するとどうなる?—「尿閉」と「急性腎障害」の怖さ—

尿が出ない状態を放置することは、体の中に「毒素」と「余分な水分」を溜め込み続けることを意味します。

尿毒症(にょうどくしょう)

本来尿から捨てるべき老廃物が血液中に溜まり、吐き気、意識障害、けいれんなどを引き起こします。

肺水腫(はいすいしゅ)

出口を失った水分が肺に溜まり、呼吸困難を引き起こします。これは命に関わる緊急事態です。

急性腎障害(AKI)

急激に腎機能が低下する状態で、早期に原因を取り除かないと、一生涯の人工透析が必要な「慢性腎臓病」へ移行してしまうリスクがあります。

4. 今すぐ受診すべき「危険な随伴症状」チェックリスト

「ただのむくみ」で受診してもいいのかしら……と迷われる必要はありません。当院では以下の検査を組み合わせ、原因を迅速に特定します。

以下の症状が「尿が少ない」ことに加えて現れている場合は、一刻も早い受診(夜間・休日であれば救急外来も検討)が必要です。

  • [ ] 呼吸が苦しい、横になると息が詰まる(肺に水が溜まっている可能性)
  • [ ] 急激なむくみや、数日で数キロ単位の体重増加がある
  • [ ] 下腹部(の上のあたり)がパンパンに張って痛い(尿閉の可能性)
  • [ ] 吐き気が強い、食欲がまったくない
  • [ ] 意識がぼんやりする、ひどくだるい

 

5. クリニックで行う検査と診断のステップ

「尿が出ない」原因を特定するために、当院では以下の検査を速やかに行います。

(1)問診と身体診察

 脱水の有無や、お腹の張り、下肢のむくみを確認します。

(2)尿検査

尿の濃さや、蛋白・潜血の有無を確認します。

(3)血液検査

クレアチニン(腎機能)、電解質(カリウムなど)、炎症反応を調べます。

(4)超音波(エコー)検査

腎臓が腫れていないか(水腎症)、膀胱に尿が溜まったままになっていないかを確認します。痛みのない安全な検査です。

(5)残尿測定

尿をした直後に、どれくらい尿が残っているかを測定します。

6. 乏尿の治療法と日常生活での注意点

治療の基本は「原因の除去」です。

脱水が原因なら

点滴や水分摂取で血流量を増やします。

出口の詰まりなら

カテーテル(管)を通して尿を出したり、結石の治療を行います。

薬剤が原因なら

疑わしい薬の中止や調整を行います。

注意!「とりあえず水を飲む」の危険性

「尿が出ないからもっと水を飲もう」と自己判断するのは非常に危険です。もし原因が「腎臓の故障」や「出口の詰まり」だった場合、水を飲めば飲むほど体内に水分が溢れ、心臓や肺に負担をかけて病状を悪化させてしまいます。水分を増やすべきか、制限すべきかは必ず医師の判断を仰いでください。

クリニックからのメッセージ

「尿が少ない」という症状は、ご本人にとっては「少し調子が悪いだけ」と感じられるかもしれません。しかし、私たち医療従事者にとって、乏尿は非常に緊急性の高いサインの一つです。

特に、暑い時期の脱水や、新しいお薬を飲み始めた後、あるいは前立腺の悩みがある方の乏尿は見過ごせません。早期に適切な治療を行えば、腎機能を元通りに回復させられるチャンスは十分にあります。

「いつもよりトイレに行かないな」「お腹が張って苦しいな」と少しでも異変を感じたら、遠慮せずにすぐにご相談ください。あなたの腎臓の健康を守るために、当院が全力でサポートいたします。

この記事の執筆者

三鷹あまの内科・腎クリニック
院長 天野博明

経歴

  • 2011年3月 埼玉医科大学医学部医学科卒業
  • 2011年4月 埼玉医科大学国際医療センター 初期臨床研修
  • 2013年4月 埼玉医科大学病院腎臓内科 助教
  • 2024年8月 埼玉医科大学病院腎臓内科 講師 
  • 2026年4月 三鷹あまの内科・腎クリニック開業

資格

  • 医学博士
  • 日本内科学会総合内科専門医・指導医
  • 日本腎臓学会専門医・指導医
  • 日本透析医学会専門医・指導医
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